「アトミック・ボックス」読了。

 池澤夏樹著「アトミック・ボックス」(角川文庫)読了。2012年から毎日新聞に連載された長編小説。着替えをポリ袋に入れて瀬戸内海を泳いで渡る場面があったり、GW中の話だったりして、何かとタイムリーな一冊でした。
 2011年の原発事故を、作家としてどう作品に反映していくかは大きなテーマだろう。その点では村上龍の「オールド・テロリスト」に通じるものがある。その分二人の個性がよく表れているように思う。
 登場人物は魅力的だし、ストーリーも池澤夏樹らしからぬサスペンス的な逃走劇に仕立てられていて、読みやすい。でも、「オールド・テロリスト」のこってりした味わいに比べるとやや薄味かな?
 物語の本筋とは関係ないけれど、主人公の美汐が専門にしていた社会学という学問の面白さが、少しだけ分かったような気がしたのは収穫でした。

 ↓ あ、「キトラ・ボックス」は美汐の元恋人・藤波三次郎が主人公で、美汐も登場するようです。文庫化を待とう。
キトラ・ボックス

キトラ・ボックス