「どこから行っても遠い町」読了。

 川上弘美著「どこから行っても遠い町」(新潮文庫)、昨日読了。一つの町を舞台に、様々な人物が主人公となる連作短編小説。
 前半はわりとのどかな雰囲気だったのに、後半は影のある人物ばかりが登場し、ややほの暗いイメージが後に残る。私は前半の感じが好きだったので、ちょっと残念だった。「真鶴」や「水声」が好きな人はこれでいいんだろうけれど。

どこから行っても遠い町 (新潮文庫)

どこから行っても遠い町 (新潮文庫)

 最終話に「好きな人が死ぬと、すこし、自分も死ぬのよ」(343ページ、「ゆるく巻くかたつむりの殻」)という言葉が出てくるが、少し前に読んだ白石一文著「翼」(鉄筆文庫)に出てくる死生観とすごく近いものがあるように思った。
 「翼」には「・・・人の死は関係者全員の死をもって完全な無になるのかもしれないですね(113ページ)」というセリフなどがあり、言っていることは大変似ている。偶然とはいえ、立て続けにこの2冊を読んだことを不思議に感じた。そのへんのところをテーマに、二人で対談して欲しいです。