「ある雪のふる夜だった。…」

 昨日読み始めた安部公房著「飢餓同盟」(新潮文庫)の序盤の一節。

 ある雪のふる夜だった。その日は朝から雪がふりつづいていた。最初にマサぶきの屋根の上で秋がおわった。次にワラ屋根の上の秋が追いはらわれ、最後にトタン屋根の上で死んだ。自転車に乗っていたものが降りておしはじめると、短靴をはいていたものはゴム長にはきかえ、庭の畠の野菜をいけてあったものはあわててその上に目じるしの竿をたてた。馬にひかせた最初の除雪橇が子供たちにとりかこまれて大通りを通りすぎると、そのあとにもう融けない冬がきた。(6ページ)

 こういう文章、しびれるなあ。