「Yの木」読了。

 辻原登著「Yの木」(文藝春秋)読了。表題作のほか、「たそがれ」、「首飾り」、「シンビン」の3編を収録した短編集。
 「首飾り」と「Yの木」は作家が主人公で、著者自身の姿が投影されていると思われる部分があって興味深かった。クラブのママに「ツジちゃん」と呼ばれたり、和歌山県出身で、「たけくらべ」の美登利(紀州出身)に思いを馳せたりする。
 そして、次のような記述も。

 自分の書くものが、例えば「ポップ文学」としてもてはやされている新人作家の作品と比較された場合、新味がないとして批判されるのではないかという怖れが、絶えず頭から離れなかった。
 すでに一九八〇年代前半から、文学の世界では欧米から輸入された新思潮が影響力を持ちはじめ、九〇年代に入るとさらに幅をきかせるようになっていた。 (「Yの木」、139ページ)

 ダブル村上や高橋源一郎が出てきた頃に抱いた、著者の本音なのかもしれない。私はこういう古風な小説が大好きですよ。

Yの木

Yの木