「虹色と幸運」読了。

 柴崎友香著「虹色と幸運」(ちくま文庫)読了。初めて読む作家だったので、前半は読み慣れない文章にやや苦戦したが、後半は序々に慣れて物語を楽しむことができた。「現代人が抱える憂鬱」をテーマにした小説らしい小説で、読後感はとてもすがすがしい。
 主人公は久しぶりに再会した30歳の女性3人。彼女たちの1年間を、季節の経過とともにたどっていく。それほど大事件が起こるわけではないし、夫や恋人がいてもセックスの場面は全く出てこない。それが逆に新鮮だし、今の自分には味わい深く感じられた。
 でも「この文章いいなあ、上手いこと書くなあ」と思える部分が少ないのは残念。会話文や情景描写など、リアルではあるんだけど、もう少し何か心に響くものが欲しいです。角田光代のすごさを逆に感じます。

虹色と幸運 (ちくま文庫)

虹色と幸運 (ちくま文庫)