「抱擁、あるいはライスには塩を」読了。

 江國香織著「抱擁、あるいはライスには塩を 上・下巻」(集英社文庫)読了。古い洋館に住む風変わりな一家、柳島家の三世代に渡る物語。それぞれに語り手が異なる23章から成り、毎回誰が主人公なのか考えながら読み進めるのが楽しかった。
 久しぶりに「読み応えのある小説を読んだな」という読後感。物語の世界にどっぷりと浸かって、夢の中にまで持ち込んでしまうほど存分に味わった(変な夢でした)。このあとの展開もいくらでも書けそうな感じだし、もっと続いて欲しかった。そう思わせる著者の筆力に脱帽。
 野崎歓の解説は、この本の解説として申し分ないと思う。私の言いたいことをすべて書いてくれている。しかし、この本が何の文学賞も獲っていないなんておかしい。掲載媒体が女性誌だからだろうか。文庫化を機にもっと注目されるといいのだが。