「四百字のデッサン」読了。

 野見山暁治著「四百字のデッサン」(河出文庫)読了。単行本は西日本新聞夕刊に連載されたエッセイ「うわの空」(後半)に、思い出の人たちについて語った「ひとびと」(前半)を加筆して1978年に刊行されたもの。軽妙洒脱な文章で、名文家と言われるのも納得。藤田嗣治、椎名其二、森有正田中小実昌(義弟)らとの親交について書かれた「ひとびと」が特に面白かった。

四百字のデッサン (河出文庫)

四百字のデッサン (河出文庫)

 エカキとは何なのか。子供の頃は漠然とエカキを憧れていたが、いったいそんな職業がこの世にあるのか。エカキで飯は食えぬ、と親や周囲の人たちは言ったが、それは大人の知恵というもので、絵を描いて生涯を生きてゆこうと願う若者にとっては、いや若者に限らず、ひとつの道を選ぶ人間の動機というものは、他のことに心わずらわされないある爽やかさが決定づけている。 (169ページ、「エカキ」より)

 ↑ この「爽やかさ」という言葉が印象に残った。