「幸田文 旅の手帖」読了。

 幸田文著・青木玉編「幸田文 旅の手帖」(平凡社)読了。「旅」だけをテーマに編纂された本なので退屈してしまうかと思ったが、全然そんなことはなかった。著者は東京生まれの東京育ちなので、旅先は伊豆や箱根など首都圏近郊が多いが、知床や積丹半島など北海道もよく登場するのは意外だった。
 短い文章もいいが、少し長いものになるとほとんど短編小説に近い世界が広がって、作家としての幸田文にも大いに興味が湧いた。こういうほんものの日本語を使いこなせる書き手に出会うと、羨ましくて圧倒されてしまう。
 装丁はクラフト・エヴィング商會。ざらっとした手触りが着物の布地のようで心地よい。

幸田文 旅の手帖

幸田文 旅の手帖