「地上の飯 皿めぐり航海記」読了。

 中村和恵著「地上の飯 皿めぐり航海記」(平凡社)読了。著者は比較文学の研究者。幼いころから東京、札幌、モスクワ(ソ連時代)、メルボルンなどを転々としていたようだが、いったいお父さんは何者? おそらく学者らしい(ウィキペディアによると、中村健之介というロシア文学者)。
 食べるということはその土地の歴史や風土と切っても切り離せないものだが、植民地主義によってずいぶんとゆがんだものになってしまった。オーストラリアではクリスマスは30度を超える夏なのに、ヨーロッパと同じ熱くてこってりとしたクリスマスプディングを食べる、というように。著者はその土地のものを食べるのがいちばん自然で美味しいと主張し、実践する。
 もちろん各国の文学作品なども多く引用されるが、学者とは思えない親しみやすい文章が印象深い(詩人でもあるようだ)。世界を旅した気分が味わえる、楽しい本だった。

地上の飯―皿めぐり航海記

地上の飯―皿めぐり航海記