「ベースボールの詩学」読了。

 平出隆著「ベースボールの詩学」(講談社学術文庫)読了。1989年に筑摩書房から刊行された単行本が、今年なんと学術文庫として甦った。同時期に書かれた「白球礼讃」(岩波新書)も大好きな本だが、こちらも著者ならではの楽しい一冊だった。
 野球ルールの変遷をたどっていくと、「ボールを走者にぶつけてアウトとすることをやめた」ことと、「ワン・バウンドで捕球してもアウトとしていたが、空中で直接に捕らなければアウトにはならないとした」という2つの変更が、野球がスピード感と迫力のあるスポーツとして成熟していった大きな要因である、と指摘している。確かに、前者はスピードと飛距離の出る硬いボールでのプレーを実現させ、後者が数々の鮮烈な守備のファインプレーを生み出した。
 印象に残った数々のフレーズの中から、いちばん好きなものを引用しておく。

 外野のひろがりはどこまでもひろがる。かくして、この地上で、ベースボールのフィールドでない場所はどこにもない、と断言することができる。(「第6章 ダイアモンドと無限」 151ページ)

 この章では、「閉じられていてなおかつ開かれてもいる」という野球のフィールドの特殊性を述べている。いつどこにホームランボールが飛んでくるかわからない、ということだ。キャッチする自信ないなあ。

ベースボールの詩学 (講談社学術文庫)

ベースボールの詩学 (講談社学術文庫)

 平出隆には、ぜひまた野球本を書いて欲しい。