福島県の作家。
3・11をきっかけに、東北にゆかりのある作家が予想以上に多いことを知った。中でも、古川日出男、冲方丁、玄侑宗久、長田弘、青山南など、福島県出身、あるいは在住という物書きが案外多くて驚いた。彼らは様々なかたちで、故郷や住まいのある土地の現状をとらえ、発信を行っている。
昨日買った「yomyom」に、玄侑宗久のエッセイ「フクシマで読む『方丈記』」が載っている。以下、その冒頭を抜粋。
三月十一日の地震、津波、そして原発事故以来、しばらくは本が読めなかった。原発から西四十五キロの三春町に居つづけ、読んだものといえば、新聞と週刊誌、原発事故関係のデータやグラフぐらいだろうか。とにかくひと月ほどはフィクションは勿論どんな本も読む気になれず、これまでに経験がないほどにテレビを視た。そして言葉にできない津波のような映像に、押し流されていたのである。
放射能や原発関係の味気ない書籍の合間に、ようやく開いたのは吉村昭氏の『三陸海岸大津波』(文春文庫)。明治と昭和の三陸大津波その他を描いたこの本によって、私はふいに目を覚ましたのかもしれない。
おお、東京にいる私も、程度の差こそあるだろうが、同じような日々を過ごしていた。「三陸海岸大津波」を読んでから、ようやく本が読めるようになったというのも同じ。
同エッセイによると、震災後福島では自殺者が著しく増えているという。僧侶として、作家として、思うことの多い毎日だろう。復興構想会議のメンバーで忙しいだろうが、今後もどんどん書いてほしいと思う。