「朽ちていった命」読了。

 NHK「東海村臨界事故」取材班著「朽ちていった命 被曝治療83日間の記録」(新潮文庫)読了。1999年9月30日、JCOで起きた事故で被曝した大内久氏の治療をめぐるドキュメント。事故の概要説明は最小限に抑え、被曝治療のみにスポットを当てているところが潔い。一日で読み終えた。
 至近距離で大量の中性子線を浴びた大内氏の染色体はずたずたに破壊され、新たな組織を作ることができない。古い組織は徐々に剥がれ落ち、被曝後83日後にその体は人間とは思えない姿になって朽ち果てて行く。改めて放射線中性子線)が人体に与える影響の凄まじさを知った。
 同時に、風化していくことの恐ろしさも感じた。この事故を省みようとする機会はもう少ないし、原発で働く人たちの安全性を高めるための教訓とされることもなかった。今回この本が重版され再び多くの人に読まれることは、本が持つ重要な役割を示してくれたように思う。

朽ちていった命:被曝治療83日間の記録 (新潮文庫)

朽ちていった命:被曝治療83日間の記録 (新潮文庫)