「三陸海岸大津波」読了。

 吉村昭著「三陸海岸津波」(文春文庫)読了。明治二十九年の津波、昭和八年の津波、昭和三十五年のチリ津波についての記録や証言をまとめたものだが、これは本当にすごい本だ。
 明治・昭和の津波が起きたのは夜だった。そのことが、津波発見や避難の遅れ、混乱に拍車をかける。今回も夜起きていたらと思うとぞっとする。驚いたのは、明治・昭和においても、全国・世界からの救援活動のあり方が、スピード以外の点では現在とそれほど違いがないことだ。各地から警察や医者がかけつけ、善意の物資や義援金が集められる。天皇が個人で見舞金を出しているのは大きく違う点だろう。
 今回の津波で話題となった、田老地区の巨大防潮堤のことなども書かれている。田野畑村に住むある老人は「津波は、時世が変ってもなくならない、必ず今後も襲ってくる。しかし、今の人たちは色々な方法で十分警戒しているから、死ぬ人はめったにいないと思う」、と語った。それでも著者はこう述べる。「しかし、自然は、人間の想像をはるかに越えた姿を見せる。」その通りのことが起きてしまった。5年前に亡くなった著者が生きていたら、さぞ悲しむことだろう。

三陸海岸大津波 (文春文庫)

三陸海岸大津波 (文春文庫)