「猫の客」読了。

 平出隆著「猫の客」(河出文庫)読了。万人に強く推すような作品ではないが、丁寧な筆致で書かれた名品。これは、木山捷平文学賞受賞にふさわしい。私はこういう、さほどドラマチックな出来事が起きるわけではない、静かな物語が好きだ。
 主人公の奥さんと隣家の猫、チビが絶交した場面が好きだ。九州の親戚からもらった立派なシャコがあまりに美味しくて、チビは飛びかかって食べようとする。ところが、シャコを下げようとした奥さんの手にふかぶかと咬みついてしまう。奥さんは痛みをこらえながら、こう言う。「出て行きなさい、もう、絶交。」
 本の表紙に、作中に登場する「稲妻捕り」の絵が使われていて、それに気づいて嬉しくなった。

猫の客 (河出文庫 ひ 7-1)

猫の客 (河出文庫 ひ 7-1)