「編集者という病い」読了。

 見城徹著「編集者という病い」(集英社文庫)読了。雑誌などに寄稿した文章やインタビューを寄せ集めた本なので、終盤は内容がかぶっていて退屈だったが、全体としてはとても刺激的で面白かった。
 大江健三郎石原慎太郎五木寛之が好きで、高橋和巳吉本隆明にも影響を受けたっていうのは、とても典型的な当時の若者の精神構造なのだろうけれど、最近はそういう「典型」がないのが寂しい。著者が言っているように、他人との関係を切り結ぶ機会は恋愛をすることでしか今は得られないような気がする。
 「僕は僕を変えてくれるもの以外に興味がない」という言葉が印象に残った。尾崎豊中上健次鈴木いづみ山際淳司など関わった表現者たちの死をめぐるエピソードは、それぞれに重みがある。角川春樹コカイン事件を機に会社を辞めたというのも、この人らしい選択(ある種の自己演出)だと思った。
 「幻冬舎」という名前を五木寛之が考えたというのは知らなかった。ほかに「幻城社」と「幻洋社」という候補があって、著者が「幻冬舎」を選んだらしい。「岐阜」を選んだ織田信長のようだ(ほかに「岐山」と「岐陽」が候補にあった)。