「キルプの軍団」読了。

 昨日の夜は頭が変だったけど、なんとか持ち直した感じ。天気もよいし。早々に、日記も復活。
 大江健三郎の「キルプの軍団」をようやく読了。大江本をまともに1冊読みきったのは初めて。やっぱり仏文をやっている人の文体なんだよね……正直苦手。この本は大江本人や自身の家族が登場する。主人公は「オーちゃん」という大江の長男で、彼の語り言葉で物語は進んでいく。オーちゃんと忠叔父さんが、ディケンズの「骨董屋」という本の原書を読み進めるところから話は始まり、政治活動家や対立闘争などのきな臭い事件が突然絡んでくる。そういう事件的な部分がなかったら、もっと読みづらかった気もするのだが、果たして作品としてそれが必要だったのか、疑問にも感じた(この違和感は、単に私が作者と同時代を生きていない世代だからかもしれない)。でも、オーちゃんは高校三年生という人生の転機に立っていて、ある種の冒険譚に関わることで自らの行き先を決意するという筋立ては、物語としてとても収まりがよいと思う。
 好きな部分を引用しておく。長い部分はあれなので、短いところだけ。
・「こうなると、ここしばらくの苦しい旅もムダでなかったことになるから、やはり芸術というものには力があると思う。」
・「しかし当面そのような言葉をかけたい相手は思いあたらず、むしろ自分が今度気がめいったら、反射的にじゃなく論理的に――励ましうるものなら――自分を励ます態度でいよう、と結論したわけなのでした。」


 さて、次はアンドレイ・クルコフ著「ペンギンの憂鬱」(新潮クレストブックス)を読みます。

ペンギンの憂鬱 (新潮クレスト・ブックス)

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