「予定日はジミー・ペイジ」読了。

 角田光代著「予定日はジミー・ペイジ」(白水社)読了。「マザーズ」を読んだ後なだけに、能天気な登場人物や平和なストーリーが物足りなく思えてならなかった。
 でもまあ、子育てに比べると妊娠中って実に能天気で平和な期間だったなあと思う。誰もが優しくしてくれるし、ぼんやりしていても怒られない。そういえば「マザーズ」にもこんな記述があった。2人目の子を妊娠したユカの独白。

 産まれてしまえばうるさく、うざったく、良い事ばかりではないと分かっているが、お腹にいる間は否応なしに愛おしい。私は死ぬ間際、この人生で一番幸せだったのはいつだったかと振り返る余裕があるとすれば、恐らく妊娠期間を思い出すだろう。出産でも、子供との生活でも、央太との生活でも、桂人との生活でもなく、腹に子を抱え、未知の存在に思いを馳せる今の事を思い出すだろう。(416ページ)

 私にとってもあの8ヶ月あまり(妊娠がわかってから出産まで)は、不思議な幸福感に満ちた日々だった(つわりは死ぬほどしんどかったけれど)。そんなことをしみじみと思い出させてくれる小説だったが、「対岸の彼女」や「八日目の蝉」のような切実で痛々しいぐらいの作品の方が私は好きだ。

予定日はジミー・ペイジ

予定日はジミー・ペイジ