「犬身 上・下巻」読了。

 松浦理英子著「犬身」(上・下巻、朝日文庫)読了。犬になりたいと願う主人公、八束房恵が犬の「フサ」に変身するという一風変わった小説だが、とても面白くて夢中になって読んだ。
 登場人物がどんな人間なのかを裏付けるエピソードの作り方が、ものすごく説得力があると思った。いちばんすごいのは、フサの飼い主である梓が母親に手土産としてフルーツ・ゼリーを持っていく場面。梓が帰る際、母親は「もらい物だけどあんまり好きじゃないから」と言って、他のものと一緒にそのフルーツ・ゼリーを渡すのだ(わざとではないと後で電話をかけてくる)。強烈すぎて思わず笑ってしまった。
 梓の兄・彬と母親のキャラクターがあまりにエキセントリックなのでこういう結末にしかできなかったとは思うが、後半はちょっとドロドロしすぎで残念だった。もっと「犬と人間」というテーマに徹底してほしかった。

犬身 上 (朝日文庫)

犬身 上 (朝日文庫)

犬身 下 (朝日文庫)

犬身 下 (朝日文庫)