「アナーキー・イン・ザ・JP」読了。

 中森明夫著「アナーキー・イン・ザ・JP」(新潮社)読了。こんな小説読んだことない。明治・大正時代のアナーキスト大杉栄が、主人公の17歳のパンク少年・シンジの頭の中に棲みついた、というなんとも奇想天外な物語。
 いや、それだけならありがちだけど、大杉栄の生涯や思想をストーリーに詳しく組み込んでいるので、評伝のようにも読めるのがすごい。知的好奇心を大いに刺激されて、ほかにも読書が広がっていきそうな一冊。まずは大杉栄岩波文庫を読んでみたくなった。
 一番好きなのはシンジの中の大杉栄とシンジの兄・一郎が話す場面。「大杉栄は文学をわからなかった。しかし、文学は大杉をわかっていた(192ページ)」という言葉のあたりなんか、すごく好きだ。
 著者の言葉に対する感覚は斬新で鮮烈。この大作を「新潮」2010年5月号に一挙掲載したというのがすごい。年末の読書回顧特集で大いに取り上げられるんじゃないかな。書評を読むのが楽しみだ。

アナーキー・イン・ザ・JP

アナーキー・イン・ザ・JP

 新潮社のHP・重松清の書評→http://www.shinchosha.co.jp/shinkan/nami/shoseki/304632.html