「シベリア抑留とは何だったのか―詩人・石原吉郎のみちのり」読了。

 畑谷史代著「シベリア抑留とは何だったのか―詩人・石原吉郎のみちのり」(岩波ジュニア新書)読了。信濃毎日新聞社記者による同紙での連載を本にしたもの。読み終えるとさまざまな方向へ興味が広がっていく一冊。読みやすいし、ジュニア新書にはうってつけの内容だ。「不毛地帯」の壱岐さんが、モスクワに行くことになってあんなに取り乱した理由も少し理解できた。

 そこでは〈誰が生きのこるかとういうことは、ただ数のうえでの問題〉にすぎなかった。しかし、〈死においてただ数であるとき、それは絶望そのものである。人は死において、ひとりひとりその名を呼ばれなければならないものなのだ〉(「確認されない死のなかで」)と石原は書く。(99ページ)

 シベリア抑留について読みたくて手にした本だが、石原吉郎という詩人を知ることができたことが何よりの喜び。抑留についての石原のエッセイ集「望郷と海」(筑摩書房)が読みたいけれど、高い値段がついてそうだなあ。