「新書七十五番勝負」読了。

 渡邉十絲子著「新書七十五番勝負」(本の雑誌社)読了。「本の雑誌」に現在も連載されている「馬の耳に新書」をまとめたもの。著者はかなりの数の新書を読んでいるはずだが、同連載では毎月1冊、1年で12冊しか取り上げることはできない。毎月どの本を選ぶかは、まさに新書を相手にした「勝負」なのだ。
 「なんの役にたつのか皆目見当がつかないものからしか、新しい価値、つまり未来は生まれない」という著者が好むジャンルは、自然科学、鉄道、パズルなど。ブルーバックスが数多く取り上げられるなど、個性的なラインナップだ。
 しかし、本書の何よりの特徴は文章の素晴らしさ、きめ細かさだ。この人は、明らかに「遠い」と「とおい」の表記を意図的に使い分けている。自分の名前を「十糸子」とされることに激しい嫌悪感を覚えるのは、その漢字がもつ背景や歴史を重視するからだ。画数が悪いと言われてペンネームを変えてしまうような作家とは、言葉に対するスタンスが違う。
 新書ガイドとしてだけでなく、読み物として十分に楽しめる、お得な一冊。

新書七十五番勝負

新書七十五番勝負