「人生の色気」読了。

 古井由吉著「人生の色気」(新潮社)読了。72歳の著者がこれまでの人生を振り返り、6回にわたって語った内容から構成されている。特にテーマを限定することなく自由に話した感じなので感想を書きづらいが、ベテラン作家の言うことは含蓄があって貴重だし、もっとこういう企画はやるべきだろう。
 著者はいわゆる「内向の世代」の一人であるが、その前の世代である「第三の新人」といわれた作家たちに、かなりのコンプレックスを感じていたようだ。まあ、「第三の新人に」というより、「吉行淳之介に」という感じもするけれど。週刊誌にゴシップとして取り上げられた作家なんて吉行ぐらいのもので、安岡章太郎庄野潤三が載ることはなかったはず。
 あとやっぱり三島由紀夫中上健次の存在感といったら、当時すごかったんだろうね。村上春樹とは全然違うよね、きっと。同時代で体感したかったものだ。脂が超ノリノリのときに死んでしまうというのも強烈な印象だろう。そんな経験、ないなあ。作家で死んだのは中島らも鷺沢萠ぐらいか。どちらもそれなりにショックだったが、ちょっとスケールが違う。