「僕のなかの壊れていない部分」読了。

 白石一文著「僕のなかの壊れていない部分」(光文社文庫)読了。すごい本だった。こんな強烈なキャラクターの主人公はめったにいない。「ぼくは勉強ができない」の時田秀美や「ノルウェイの森」のワタナベトオルと並ぶぐらい、“松原直人”は忘れることができない名前になる気がする。河原で釣り人をぶん殴るところとか、諏訪の家から裸足で逃げ出す場面なんか、最高。
 人間の生死に真摯に向き合った小説。一冊の本にここまでずっしりと重みを持たせることができるという事実に、ただ呆然とする。「おすすめ文庫王国」で窪美澄は「一度、この本を読んでしまったら、どんな作品を読んでも(書いても)「ぬるすぎる!」と思ってしまう重い病に罹患します。本当に恐ろしい本です」と書いているが、大いに納得、共感した。この本を紹介してくださった窪さんに心から感謝申し上げる。白石氏の本は、しばらく時間をおいてまたぜひ読んでみたいと思う。

僕のなかの壊れていない部分 (光文社文庫)

僕のなかの壊れていない部分 (光文社文庫)

ベスト5変更。

 「僕のなかの壊れていない部分」を読み終わって、今年の読了本は51冊になった。イチローの背番号なり。
 さて、本年のベスト5を変更いたします。
  1位 福永武彦著「忘却の河」(新潮文庫
  2位 金原ひとみ著「マザーズ」(新潮社)
  3位 平野啓一郎著「決壊 上・下巻」(新潮文庫
  4位 安部公房著「飢餓同盟」(新潮文庫
  5位 白石一文著「僕のなかの壊れていない部分」(光文社文庫

 読み終えたばかりで、やや拙速に過ぎるかなとも思うけれど、かなり自分好みの本だったので、たぶん大丈夫(初め2位にしたけど、やっぱり5位に変えました)。いい年末になりました。